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台湾留学体験記その3留学準備(前編)

※ この記事は旧サイトで公開していたものを修正して再掲載しています。
(初掲載2015年12月7日、リニューアル掲載2021年5月23日)

出国までにやらなければならないこと

2014年夏からの留学を目指して、2013年の末ころから少しずつ準備を始めました。とは言え、本腰を入れて準備にとりかかったのは出発3ヶ月前あたりで、そのころには、もっと早くとりかかっておくべきだった・・・と後悔しきりでした。

【仕事】

一番苦労したのは、言うまでもなく弁護士業務に関する対応です。留学予定の半年前からは、新しい案件は受任しないようにしました。継続中の案件については、海外からでも対応可能な範囲では継続するつもりでしたので、依頼者や関係者に説明して、台湾で対応をすることについて了解を得るよう努めました。郵便物や書類の授受については所属事務所の事務局にお願いして、定期的に届いたもののリストを送ってもらい、必要なものだけデータにしてメール添付で送ってもらうことで対応するようにしました。

ところで、今やメールや電話は世界中どこにいても繋がりますので、台湾で日本の弁護士業務を続けること自体にはそれほど支障は無いようにも思えますが、依頼者の立場からすれば、日本国内にいていつでも相談できるという安心感が弁護士への信頼に結びついています。したがって、私から依頼者に対して「台湾に行っても仕事を続けさせてほしい」というお願いをするのは大変勇気のいることでした。しかしながら大変ありがたいことに、ほとんどの関係先には台湾での業務継続を受け入れていただき、それどころか多くの方々に海外挑戦を応援する言葉をかけてもらいました。私は、依頼者に支えられて成長させてもらっているのだということを改めて実感せずにはいられませんでした。

一方、裁判案件や定期的な訪問が必要な案件については、どうしても台湾では対応できませんので、やむを得ず事務所の内外の弁護士に引き継ぎをお願いしました。案件処理は一件ずつオーダーメイドで組み立てていく職人的な作業ですので、依頼者に迷惑がかからないようにうまく別の弁護士に引き継ぐのは、思った以上に困難が伴いました。また、本来であれば留学前に終了していたはずの事件が長引いてしまい、出発直前に急遽ほかの弁護士に引き継ぎをお願いせざるを得なくなってしまうこともありました。

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台北駅の様子

【大学】

留学先については、次のような理由から国立台湾大学を選択しました。まず、台湾大学は台湾の最高学府であり、台湾国内はもちろん国外からも優秀な学生が多く集まっていて、切磋琢磨できる環境が整っています。実際に入学してみてわかったことですが、特に欧米からの留学生は、現地の大学で優秀な成績を収めて奨学金で留学に来ていて、学業面で傑出しているだけでなく人格面でも尊敬できる学生が多く、大いに刺激を受けました。

台湾大学を選んだもう一つの理由は、法曹界、経済界で圧倒的なプレゼンスを占めているということです(ちなみに、本稿執筆時点の台湾総統である馬英九氏、前総統である陳水扁氏のいずれも台湾大学法学部出身です)。私の場合、単に語学や法律を身につけるだけではなく、弁護士業務に繋がるような基盤をつくることも留学の重要な目的ですので、その点でも、台湾を担う人材を多く排出している台湾大学は留学先として最適だと思われました。結果的に台湾大学は学習環境、人間関係、その他もろもろの点についてすばらしい環境が整っており、大変満足でした。

大学への入学手続については、これ自体なかなか大変な作業でしたので、留学エージェントにお願いしました。留学エージェントの担当の方も、数年前まで台湾に留学されていたということで、現地の情報をいろいろと教えてもらうことができて大変助かりました。

なお、日本から台湾への留学については台湾政府による奨学金制度があり、社会人でも申請が可能です。しかし、募集時期が年に一度で、かつ、事前に語学検定試験を受験しておく必要があるなど要件が限定されており、私は、準備が間に合わず申請を諦めました。

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台湾大学名物、椰子の木ロード

【住居】

私は家族連れでの留学でしたので、留学生用の宿舎に住むわけにもいかず、天母(テンムー)という日本企業の駐在員家族が多く住む地区でファミリー用の物件を探すことにしました。天母地区は台北市の中心部からはやや離れていて(台湾大学のキャンパスや研修先の法律事務所までは、いずれもバスと電車を乗り継いで1時間ほど)、通勤・通学にはやや不便であることは否めませんでしたが、居住環境を優先して決めました。

留学の一ヶ月前に家探しのために台北を一時訪問し、現地の不動産仲介業者にいくつかの物件を紹介してもらい、台北滞在中に仮契約をして一旦日本に帰国しました。その後、改めて台北に渡り大家さんと本契約をして、そのままその物件で居住を開始しました。

台湾のマンションは、日本のように施主である不動産会社が間取りを決めて販売するのではなく、オーナーがスケルトンの状態で購入した後に自分仕様に間取りや内装をアレンジします。その結果、分譲マンションはどの部屋もオーナーの個性溢れる仕様になっていて、使いづらい間取りや悪趣味な内装のところも少なくありません。また、家賃の設定や敷金の処理なども、日本よりもオーナーの裁量幅が大きいという実務習慣があります。したがって、物件探しにおいては信頼の置ける業者に仲介してもらうことが非常に重要だと思います。(続く)

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