• 【4/28更新版】新型コロナウイルス感染症問題:要請に従わない施設の公表措置のこれまでと今後


    本稿は4月29日22:00時点の情報に基づくものです。それ以前の情報については以下の記事をご参照ください。

    4/19更新版 新型コロナウイルス感染症問題:措置法に基づく対策措置について知っておくべきこと
    4/11更新版 新型コロナウイルス感染症問題:措置法に基づく対策措置について知っておくべきこと
    4/11更新版 新型コロナウイルス感染症問題:東京都の緊急事態措置の内容

    全国各地での施設使用制限等要請に至るまでの動き

    新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法」といいます)32条1項に基づく4月7日の緊急事態宣言では、緊急措置の実施区域は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県の7都府県に限定されていましたが、その後、4月16日に全都道府県に拡大変更されました。

    緊急事態制限下においては、緊急措置の実施区域の都道府県知事は、感染症まん延防止のための措置として、特措法45条1項に基づく外出自粛要請と、同2項に基づく施設使用制限等要請(施設使用制限及び催物開催制限の要請)を行うことができます。実際にも、現時点において全都道府県で特措法45条1項の外出自粛要請が出されています。

    まずは施設使用制限等要請(第1段階)から

    一方、施設使用制限等要請については当初の想定とは少々異なった展開を見せています。特措法45条2項に基づく施設使用制限要請、催物開催制限要請の対象となる施設は、新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令(以下「特措法施行令」といいます)11条1項で類型ごとに細かく指定されており、例えば商業施設等については、床面積が1000㎡を超えるもののみが制限要請の対象とされています。従前の新型コロナウイルスのまん延状況からすると、これでは対象が限定され過ぎていて効果が薄いと言わざるを得ません。

    そこで、特措法45条2項ではなく、緊急事態宣言の発令の有無を問わず広く都道府県対策本部長の一般的な権限を定めた特措法24条9項(都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域にかかる感染症対策を的確かつ迅速に実施するために必要があると認めるときに、公私の団体又は個人に対して必要な協力の要請をすることができるという条項)に基づいて、より広範囲の施設に施設使用制限等要請を行うことが検討されました。

    そして、政府は、4月10日に東京都が「特措法24条9項に基づく施設制限等要請」に踏み切ったタイミングに合わせて各都道府県知事宛に「緊急事態宣言に伴う事業者への要請等に係る留意事項等について」という文書を発し、特措法45条2項ではなく24条9項に基づいて施設使用制限等要請を行うことの合理性について明言しました。

    4月16日に緊急措置の実施区域が全都道府県に拡大変更された後も、各都道府県において、上記の東京都の例と同様、特措法24条9項に基づいて施設制限等要請を行うという措置が採られるようになりました。緊急事態宣言下であるにもかかわらず、緊急事態宣言の発令を要件とする措置ではなく、敢えてこれを要件としない措置を採ることが一般化したというわけです。

    特措法24条9項に基づく要請と特措法45条2項の要請の関係は?

    それでは、この24条9項に基づく要請と特措法45条2項の要請とはどのような関係にあると理解すればよいのでしょうか。この点については、上記の4月10日の「緊急事態宣言に伴う事業者への要請等に係る留意事項等について」でも必ずしも明確にされておらず、行政内部でもいろいろと議論があったものと推測されます。

    最終的には、4月23日に政府が各都道府県知事宛に発した「第45条の規定に基づく要請、指示及び公表について」 という文書で、以下のように整理して理解すべきことが明らかにされました。

    ・特措法45条第2項及び第3項の規定に基づく要請及び指示は、施設を管理する者等に対して行われるものであり、使用制限等の対象も個別の施設となる。また、当該要請及び指示に伴う特措法第45条第4項の公表も、特定可能な個別の施設名等を広く周知することにより、当該施設に行かないようにするという合理的行動を確保することを考え方の基本としている。

    ・したがって、第1段階として特措法第24条第9項の規定に基づく協力の要請を業種や類型毎に行ったのち、それに正当な理由がないにもかかわらず応じない場合に、第2段階として特措法第45条第2項の規定に基づく要請、次いで同条第3項の規定に基づく指示を個別の施設の管理者等に対して行い、その対象となった個別の施設名等を公表するものとする。

    特措法第24条第9項の要請は施設名等を特定しない緩やかな一般的要請であり、一方、特措法45条第2項の要請は特定の施設名を公表して行う強い個別的要請であると区別されたわけです。そして、後者にすら従わない場合には、最終手段として特措法45条3項の指示という措置が採られることになります。

    この点、筆者は、従前、特措法45条2項と3項の条文を虚心坦懐に読んで、特措法45条第2項の要請は施設名等を特定しない一般的なもの、特措法45条第3項の指示は施設名を特定して行う個別的なものであり、要請と指示の2段階のメニューが用意されているのだと理解していました。実際のところ、法文の制定段階ではそのような意図が働いていたのではないかと思います。ところが、先述したような事情から、結果としては、特措法第24条第9項の規定に基づく要請という特別メニューが加えられ、一般的要請→公表を伴う個別的要請→公表を伴う指示という3段階のメニュー構成で運用されるに至ったというのが実情ではないでしょうか。

    とうとう施設使用制限等要請(第2段階)に!

    4月16日に緊急措置の実施区域が全都道府県に拡大変更されて以降、各地で施設使用制限等要請に従わない施設、特に、パチンコ店の営業継続が問題視されるようになりました。よく知られているようにパチンコ店の営業については政治的利権が関わっていますが、この状況下において不可侵の領域でいられるはずがなく、施設使用制限等要請に従わないパチンコ店に対する次なる措置を求める機運が高まりました。4月23日の政府による「第45条の規定に基づく要請、指示及び公表について」も、このような背景事情を踏まえて再読してみると内容がよく理解できると思います。

    そして、4月24日、大阪府が全国で初めて、特措法第24条第9項の規定に基づく要請に従わない施設を対象として、特措法45 条2項に基づき、施設名を具体的に特定して休業要請を行い、かつ、この事実を公表しました。これに続き4月28日には、神奈川県茨城県群馬県が同様の措置を行いました。4月29日以降、この流れは他の都道府県にも拡大していきそうです。

    これらの措置について、「知事が要請に従わない施設について任意に公表に踏み切った」ことを問題視する報道や発言が散見されます。しかし、特措法45条2項に基づく要請を行う場合は同4項に基づいて必ず公表を行わなければならないのですから、前提事実を誤解したものと言わざるを得ません。

    この先、施設使用制限等指示(第3段階)はあるか?

    先述のとおり、4月下旬以降、都道府県知事による施設使用制限等の要請については、一般的要請→公表を伴う個別的要請→公表を伴う指示という3段階のメニュー構成で運用されることとなっています。したがって、大阪府や神奈川県が実施した第二段階の措置「公表を伴う個別的要請」にすら従わない施設がある場合、第三段階の措置である「公表を伴う指示」の可能性が浮上してきます。

    4月23日の政府による「第45条の規定に基づく要請、指示及び公表について」では、特措法45条3項の指示を行うためには、単に特措法45条2項の要請に従わないというだけでは足りず、例えば「専門家の意見として、対象となる施設やその類似の環境(業種)が、クラスターが発生するリスクが高いものとして認識されている上に、当該施設において、いわゆる『3つの密』に当たる環境が発生し、クラスターが発生するリスクが高まっていることが実際に確認できる」等の状況が存在する必要があるとされています。大阪府や神奈川県でも、このような観点から指示を実施するかどうかを検討する必要があるでしょう。

    指示にすら従わない施設がある場合はどうなるか?

    都道府県知事が特措法45条3項の指示に踏み切ったものの、その指示にすら従わない施設がある場合は、どうなるのでしょうか?

    現在の特措法には、施設使用制限等要請・指示に従わない事業者に対して、一定の事項を強制するための根拠規定はありませんし、罰則の適用もありません。したがって、指示に従わない施設に対しては、もやは特措法では対応しきれないと言うしかなく、関連する別の法律や都道府県条例を適用して何らかの措置を講じることを検討するしかないと思います。