※ 2020年4月11日17:00投稿
東京都にお住いの方、勤務されている方、東京都内の事業者向けに、新型コロナウイルス感染症対策における、東京都の対応について整理しておきます。
現在までの行政(日本政府及び東京都)の動きを教えてください
詳細は別稿「措置法に基づく対策措置について知っておくべきこと」で記載していますが、概要、以下のとおり、全ての行政対応は法律の規定に則って進められています。
■3月14日:新型インフルエンザ対策特別措置法改正法施行
・この法改正によって、新型コロナウイルス感染症を新型インフルエンザ等とみなすことで、既存の法律に基づいて様々な行政対応ができるようになりました。
■3月26日:特措法15条1項に基づき「新型コロナウイルス感染症対策本部」設置
■4月7日:特措法第32条1項に基づき「新型コロナウイルス感染症対策本部」の本部長(内閣総理大臣)が東京都を含む7都道府県を対象に緊急事態宣言(5月6日まで)
・この緊急事態宣言によって、対象の都道府県の知事は、住民に対する外出自粛要請や、施設管理者・催物主催者に対する施設使用制限要請や催物開催制限要請ができるようになりました。
■4月7日:特措法45条1項に基づき東京都知事が都内全域を対象に外出自粛要請(5月6日まで)
・他の都道府県では外出自粛要請と同時に施設使用制限要請及び催物開催制限要請を出したところもありましたが、東京都は4月7日の時点では外出自粛要請のみとし、施設使用制限要請及び催物開催制限要請については保留していました。
■4月11日:特措法24条9項に基づき東京都都知事が施設使用制限要請及び催物開催制限要請(5月6日まで)
・とうとう東京都も施設使用制限要請及び催物開催制限要請に踏み切りました。ただし、特措法45条2項に基づく要請ではなく、同法24条9項に基づく要請でした(後述)。
外出自粛要請によって買物・通院・出勤も制限されるのでしょうか、外出した場合に罰則の適用はあるのでしょうか
外出自粛要請は、医療機関への通院、食料の買い出し、職場への出勤など、生活の維持に必要な場合を除き、原則として外出しないことを要請するものです。緊急を要する外出や必要な外出の自粛まで求めるものではありませんし、強制力を持って外出を禁止するものでもありません。外出行為に対する罰則の適用もありません。
各自の判断によりなるべく外出を避けることが求められています。判断に迷った場合には、東京都のQ&Aをご参照ください。
東京都の施設使用制限要請、催物開催制限要請の具体的な対象を教えてください
4月11日の0時から実施されている東京都の施設使用制限要請、催物開催制限要請は、対象施設を以下のように大きく分けて3つの類型に分類して、類型ごとに要請の内容や程度を変えています。詳細は東京都の公表に委ね、ここでは概要のみを整理しておきます。
第1類型 | 遊興施設、大学・学習塾等、運動・遊戯施設、劇場等、集会・展示施設、商業施設 | 基本的に休止を要請 |
第2類型 | 文教施設、社会福祉施設 | 施設の種別によっては休止を要請 |
第3類型 | 社会生活の維持に必要な施設(医療施設、生活必需物資販売施設、食事提供施設、住宅・宿泊施設、交通機関等、工場等、金融機関・官公署等) | 休止は要請せず適切な感染防止対策を要請 |
第1類型は、遊興施設、大学・学習塾等、運動・遊戯施設、劇場等、集会・展示施設、商業施設の6つのカテゴリーです。これらについては、基本的に営業休止要請の対象とされています。
本来、緊急事態宣言時における施設使用制限要請、催物開催制限要請は特措法45条2項に基づいて実施することが想定されていました。しかし、特措法45条2項に基づく施設使用制限要請、催物開催制限要請の対象となる施設は、新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令(以下「特措法施行令」といいます)11条1項で類型ごとに細かく指定されており、例えば商業施設等については、床面積が1000㎡を超えるもののみが制限要請の対象とされています。
しかし、東京都は、今回、特措法45条2項ではなく、緊急事態宣言未発令時にも広く適用される都道府県対策本部長の一般的な権限を定めた特措法24条9項(都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域にかかる感染症対策を的確かつ迅速に実施するために必要があると認めるときに、公私の団体又は個人に対して「必要な協力」の要請をすることができるという条項)に基づいて、今回の施設使用制限要請、催物開催制限要請を行っています。
第2類型は、文教施設、社会福祉施設で、一律に休止を要請するのではなく、施設の種別によって要請内容が変わります。例えば、学校については原則として休止を要請するものの、保育所、学童クラブ、通所介護施設等については休止を要請せず、施設運営の際の適切な感染防止対策を要請施するとされています。ここで言う「適切な感染防止対策」というのは、具体的には検温・体調管理、マスク着用、在宅勤務、来訪者の制限といった感染防止対策を指します。
第3類型は、社会生活の維持に必要な施設、具体的には、医療施設、生活必需物資販売施設、食事提供施設、住宅・宿泊施設、交通機関等、工場等、金融機関・官公署等です。これらについては、休止は要請せず、適切な感染防止対策を要請するとされています。
詳細については、下記の東京都のウェブサイトをご参照ください。
■東京都:新型コロナウイルス感染拡大防止のための東京都における緊急事態措置等について
東京都の施設使用制限要請、催物開催制限要請に応じて施設運営や事業を休止した場合、都に補償金を支払ってもらえますか
特措法24条9項に基づく都道府県知事の要請に応じて事業者が施設使用や催物開催を止めた場合について、残念ながら特措法自体には補償に関する規定はありません(特措法45条2項に基づく要請についても同様です)。
4月10日の小池都知事の会見によれば、東京都では独自の協力金制度を創設し、1社で1事業所の場合は50万円、複数の事業の場合は100万円の協力金を支払うことを検討しているとのことですが、詳細は未定です。
東京都の施設使用制限要請、催物開催制限要請に応じずに施設営業を継続した場合、どうなりますか
特措法には、施設使用制限要請、催物開催制限要請に従わない事業者に対して、要請内容を強制するための根拠規定はありません。罰則の適用もありません。
しかし、東京都の措置に関する政府の説明(4月10日の西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨)によれば、今回の特措法24条9項に基づく比較的緩やかな要請の次のステップとして、特措法45条2項に基づく要請、さらに、特措法45条3項に基づく指示と段階的に強い措置を講じていく余地があるとされています。これらの特措法45条に基づく要請または指示を行った場合、都道府県知事は特措法45条4項に基づいてその事実を公表しなければなりませんので、対象となる事業者は非常に大きな影響を受けます。
つまり、施設管理者や催物主催者は、要請に応じず施設営業を継続すると、最終的には要請に従うよう指示を受け、かつ、その事実が公表されるという形でペナルティを受けることになります。