• 【4/11更新版】新型コロナウイルス感染症問題:措置法に基づく対策措置について知っておくべきこと

    ※ 2020年4月11日17:00更新【大幅に加筆しました】
    ※ 2020年4月5日20:00更新
    ※ 2020年3月31日12:00更新
    ※ 2020年3月29日投稿

    新型コロナウイルス感染症の拡大傾向に歯止めがかからず、まん延防止のための法的措置がとうとう実行されました。その中心にあるのが、2020年3月13日に公布され、翌14日に施行された新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正法です。

    従前耳にしていた「緊急事態宣言」「外出自粛要請」といったものが現実化し、私たちの生活や企業活動は既に有形無形の影響を受けています。しかし、実際にどのような法的根拠に基づき、どのような措置が実施されているのかを具体的に理解できている人は少ないように思います。様々な利害や思惑が絡み合い、行政側の対応も必ずしも一貫性のあるものとはなっておらず、ただでさえ理解するのが難しい法制度の内容がますます見えにくくなってしまっています。

    そこで、新型インフルエンザ等対策特別措置法とそれに基づく各種施策の内容について、少しでも皆様の理解の助けになるように説明を加えたいと思います。

    新型インフルエンザ等対策特別措置法が改正されたのはなぜですか?

    新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法」といいます)は、新型インフルエンザ等の感染症に対する対策強化のために、2012年に制定された法律です。

    特措法は、感染症対策のために行政が強力な指揮権を発動することを可能にするものですが、従来の特措法は新型コロナウイルス感染症を適用対象にしておらず、このままだと新型コロナウイルス感染症がまん延している現状において同法に基づく措置を実行することはできませんでした。

    そこで、今回、特措法を一部改正して、最大2年間は新型コロナウイルス感染症を特措法の適用対象である新型インフルエンザ等とみなすことができるようにしました法改正によって、政府や都道府県知事が強力な指揮権を発動して新型コロナウイルス感染症に対する対策を行うことができるようになったのです。

    緊急事態宣言とは何ですか?

    特措法に基づき、内閣総理大臣は厚生労働大臣からの感染症発生の報告(特措法14条)を受けて、内閣に政府対策本部を設置します(特措法15条1項)。

    実際、3月26日に内閣総理大臣を本部長とする「新型コロナウイルス感染症対策本部」という名称の政府対策本部が設置されています。

    そして、政府対策本部長=内閣総理大臣は、感染症の全国的かつ急速なまん延による緊急事態が発生した場合には、緊急事態宣言を発します(特措法第32条1項)。

    4月7日、「新型コロナウイルス感染症対策本部」の本部長である安部首長は、同日より5月6日までの29日間、緊急事態措置を実施すべき区域として埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県の7都府県を指定して緊急事態宣言を行いました。

    今後、対象地域が追加される可能性もあります。緊急事態宣言が発せられると、都道府県知事は、住民に対する「外出自粛要請」や施設管理者・催物主催者に対する「施設使用制限要請」や「催物開催制限要請」等の感染防止のための協力要請をすることができるようになります(特措法第45条)。政府による緊急事態宣言は、感染症の更なる拡大を食い止めるために、草の根的なまん延防止対策を行うための合図としての意味を持っているのです。

    4月11日17:00時点において、4月7日の緊急事態宣言で対象区域とされた7都道府県は全て都道府県内全域に外出自粛要請を出しています。一方で、施設使用制限等については、各都道府県で対応が分かれています。

    例えば、東京都では、4月7日に小池都知事が、東京都全域を対象として住民に対する外出自粛要請を行う一方で、施設の使用制限等については保留するという態度を明らかにしていましたが、その後、4月11日から施設制限も実施されることとなりました。

    外出自粛要請とはどのようなものですか?

    特措法45条1項に基づく外出自粛要請は、都道府県知事が、期間及び区域を定めて、住民一般に対して、医療機関への通院、食料の買い出し、職場への出勤など生活の維持のために必要なもの以外の、不急不要の外出を自粛するよう要請するものです。

    要請する期間は「潜伏期間及び治療までの期間」を考慮して定められます。今回、緊急事態宣言の期間が5月6日までとされたことを受けて、各都道府県とも外出自粛要請期間を5月6日までと指定しています。今後、緊急事態宣言の期間が延長されれば、外出自粛期間も延長されることになると思われます。

    要請する区域については、感染症の「発生の状況を考慮」して、まん延防止のために効果があると思われる区域が定められます。本来、鉄道網、通勤・通学圏、商業圏区域等の地位的な一体性を踏まえて、市町村単位や都道府県内のブロック単位で定められることとされいましたが、現状、どの都道府県も全域を要請対象区域に指定しています。今後、感染症の拡大が収まってきた場合には、地域を限定して一部解除するようなこともあり得るかもしれません。

    特措法には、命令に従わなかった場合等の罰則規定がありますが(特措法76~78条)、外出自粛要請(「命令」ではない)に従わなかった場合は罰則の対象とはされていません

    緊急事態宣言の対象区域以外の都道府県では外出自粛要請を出せないのですか

    4月7日の緊急事態宣言で対象区域とされた7都道府県以外の都道府県でも、各都道府県知事が外出自粛や在宅勤務を呼び掛けたりする動きが見られます。これは、地方公共団体の長として住民に対して行っている任意の要請であり、緊急事態宣言を前提とする特措法45条1項に基づく外出自粛要請ではありません。

    後述するように、特措法45条1項に基づく外出自粛要請も強制力は働きませんので、各都道府県自治が行っている任意の要請と変わらないのではないかという見方もできます。しかし、個人や企業が緊急時における行動を選択する際に、特措法という法律に基づく外出自粛要請が出されているのかどうかという点が影響する部分は少なくありません(事実、東京都でも従前から小池都知事が外出を控えるよう任意に呼びかけていましたが、その後、特措法に基づく緊急事態宣言及びそれに基づく外出自粛要請がなされた4月7日を境目にして、都内主張地域の外出者の人数は激減しました)。

    4月7日の緊急事態宣言で対象区域から外れた都道府県が、対象区域に加えてもらいたいと政府に対して自ら名乗り出ているのも、このような背景事情によるものと思われます。

    施設使用制限要請、催物開催制限要請とはどのようなものですか?

    都道府県知事は、外出自粛要請だけでなく、施設使用制限や催物開催制限に関する要請を行うことができます。本来、緊急事態宣言時におけるこのような施設使用制限要請、催物開催制限要請は、特措法45条2項に基づいて実施することが想定されていました。

    しかし、特措法45条2項に基づく施設使用制限要請、催物開催制限要請の対象となる施設は、新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令(以下「特措法施行令」といいます)11条1項で類型ごとに細かく指定されており、例えば商業施設等については、床面積が1000㎡を超えるもののみが制限要請の対象とされているにとどまります。

    そこで、緊急措置の対象区域に指定された7都道府県は、特措法45条2項ではなく、緊急事態宣言未発令時にも広く適用される都道府県対策本部長の一般的な権限を定めた特措法24条9項(都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域にかかる感染症対策を的確かつ迅速に実施するために必要があると認めるときに、公私の団体又は個人に対して必要な協力の要請をすることができるという条項)に基づいて、より広範囲の施設に施設使用制限要請、催物開催制限要請を行うことを検討しているようです。

    実際、東京都は4月10日にいち早く、特措法24条9項に基づく施設使用制限要請、催物開催制限要請を実施し、上記特措法施行令11条1項の対象施設以外の施設(床面積1000㎡以下の商業施設等)にも「適切な対処」を求めました。

    東京都の措置に関する政府の説明(4月10日の西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨)によれば、今回の特措法24条9項に基づく比較的緩やかな要請の次のステップとして、特措法45条2項に基づく要請、さらに、特措法45条3項に基づく指示と段階的に強い措置を講じていく余地があるとされています。これらの特措法45条に基づく要請または指示を行った場合、都道府県知事は特措法45条4項に基づいてその事実を公表しなければなりませんので、対象となる事業者は非常に大きな影響を受けます。

    つまり、施設管理者や催物主催者は、要請に応じず施設営業を継続すると、最終的には要請に従うよう指示を受け、かつ、その事実が公表されるという形でペナルティを受けることになります。

    ロックダウンの可能性はありますか?

    ロックダウンという言葉は法律用語ではなく、明確な定義も見当たりませんが、差し当たり「強制力を伴う外出禁止や店舗封鎖などの措置」(及びその結果として生じる都市機能の停止)を意味しているのだとすると、現在の特措法にはこのようなことを実現する根拠規定はありません。

    特措法による外出自粛要請、施設使用や催物開催の制限要請、指示といった措置は、文字通り「要請」や「指示」にとどまるものであり、外出している人を強制的に居所に連れ戻したり、開店している店舗を強制的に封鎖させたり、罰則を課したりすることはできません。

    ただ、特措法に基づく要請や指示の結果、都市機能はかなり制限されることにはなるので、結果的には、事実上、「ロックダウン」や「都市封鎖」という言葉によって象徴されているイメージに近い状況になると思われます。

    一切強制がなされないのですか?

    特措法は、都道府県知事が医薬品や食品等の物資の所有者が売渡要請に応じない場合にこれらを収用することを認めています(55条1項、2項)。また、都道府県知事が物資の生産者、販売者、輸送者等に保管を命じることを認め、当該命令に応じない者には罰則を課すこととしています(55条3項、76条)。

    このように、物資の売渡や保管等の措置については強制もあり得ますが、外出自粛要請、施設使用や催物開催の制限要請、指示といった措置については、あくまで「要請」「指示」の限度でしか認められておらず、強制はなされません。

    特措法は第1条で、感染症に対する対策の強化を図り国民の生命と安全を保護することと、国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることの双方を目的とすることを宣言しています。感染症対策を強化する場合でも、むやみに国民の権利義務を制限しないように慎重に制度設計されているのです。

    施設使用や催物開催の制限要請に応じた場合に補償は受けられますか

    特措法24条9項に基づく都道府県知事の要請に応じて事業者が施設使用や催物開催を止めた場合について、残念ながら特措法自体には補償に関する規定はありませんが(特措法45条2項に基づく要請についても同様です)、特措法とは別の新たな法律や各都道府県条例によって補償を行うことが検討されています。