• 「伝統を守るために挑戦し続けます」(後編)
    司牡丹酒造株式会社
    代表取締役 竹村昭彦氏

    酒を、食を、高知を、もっと盛り上げるために!

    山口:司牡丹の今後の展望についてどのようにお考えですか。

    先程から日本酒ブームという言葉が度々登場していますが、実は、日本国内での日本酒全体の消費量は年々減っていて、ただ純米酒と純米吟醸酒の消費量が増えているだけです。マスコミは、ここだけをピックアップして日本酒ブームと言っているのです。

    昔は、蔵の地元の人たちが普通酒とか本醸造酒とかを毎晩飲んでいました。それが古くからの典型的な日本酒の消費のされ方でした。しかし、地方では高齢化と若者の流出による人口減少が進み、旧来からの消費のされ方は少なくなってきました。うちの蔵も、私が帰ってきたときは出荷量の7割が地元で3割が県外でしたが、地元の消費を頼りにしていてはジリ貧になることが目に見えていたので、県外への出荷量を徐々に増やしていって、今は7割が県外、地元が3割になっています。この傾向は続くでしょうが、県外で人気になれば、「地元の土佐で飲みたい!」「蔵を見学したい!」という形で注目度が増して、それが必ず地元の活性化に繋がると確信しています。

    ちなみに県外というのは、高知県以外のところという意味で、必ずしも首都圏という意味ではありません。例えば、福岡県には異常に「船中八策」(※)のファンが多い(笑)。そういううちの酒を愛好してくれる人がいる地域は、重点地域として大切にお付き合いさせていただいています。もちろん、今後もそうしていきます。

    ※ 船中八策: 明治新政府のあり方について、坂本龍馬が船中にて考えた策に由来する、ロマン漂う逸品。各界の著名人らにもファンが多く、「この酒でないとダメ!」と断言する大ファンも多い、司牡丹を代表する人気ナンバーワン銘柄。

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    山口:高知県酒造組合の理事長も務めていらっしゃいますね。どのようなことに取り組んでいるのでしょうか。

    現在、高知県には18の蔵元があります。蔵の規模や個性は大小様々ですが、「土佐の酒」としての伝統と誇りを持っていることは共通しています。そこで、高知県酒造組合としては、「土佐酒」のブランド化に取り組んでいます。昨年、「TOSA NAKAMA SAKE」という土佐酒ブランドコンセプトが誕生し、ロゴデザインなども完成しました。「なかま」というのは土佐弁で、本来の仲間という意味に加えて、「共有する」とか「シェアする」という意味があります。例えば、親が子どもにおもちゃを買ってあげるときに、「お兄ちゃんだけのもんじゃないぞね、弟となかまにしなさいよ」というふうに使います。

    山口:「TOSA NAKAMA SAKE」は、具体的にはどのようなコンセプトに基づき、どのような活動をしているのですか?

    先ほど言った2つの意味の「なかま」に、4つのコンセプトを託しています。1つ目は、「杯をなかま」。土佐の酒は淡麗辛口で、何杯でも飽きずに飲み続けることができます。1つの杯をなかまにする土佐流の飲み方にも最適です。

    2つ目が「食となかま」。土佐には他県の人が羨むような海、山、川の食材を活かした美味しい料理が沢山あります。土佐の酒は、そんな土佐料理の抜群のパートナーとして、美味しいものをさらに美味しく感じさせてくれます。

    3つ目、これは非常に特徴的で、我々は「技をなかま」にしています。高知県酒造組合では、高知県工業技術センターに依頼し、全ての蔵の酒造りのデータを集めて、それを全蔵で共有できる仕組みを作っています。酒造りの技術は酒蔵の命のようなものなので普通は隠したがるものですが、これを敢えて共有することで、全体のレベルアップを図っています。県単位でここまでやっているところは他にはなく、「高知方式」とも呼ばれています。

    そして、最後が「人となかま」。ずっと飲み続けることができ、料理を引き立ててくれ、全体のレベルが高い土佐酒は、結果として、それを酌み交わす人と人との最高の潤滑油になって、最強のコミュニケーションツールになるということです。だからこそ、土佐の「おきゃく」(宴会)は、性別や年齢を全く問わず、見ず知らずの他人も歓迎し、とにかく自由で明るいのです。

    この「TOSA NAKAMA SAKE」というブランドコンセプトとその4つの「なかま」を東京で発表し、ロンドン、パリ、香港、そしてもちろん高知でも発表しました。実際に土佐の酒を持っていって、その強みを丁寧に説明し、おかげさまで大変好評でした。

    ワインだと、ボルドーとかブルゴーニュのように、産地の名前でしっかりとブランド化されていますよね。同じように、辛口の日本酒と言えば土佐酒だと言われるように、ブランドとして認知してもらいたいのです。実は、近年はとにかく甘い酒の方が好まれる傾向がありますので、言ってみれば、逆張りしている状態。実際、今、我々のように辛口で押しているところはほとんどありません。でも、見ていてください。いずれ風向きが変わりますよ。

    インタビューを終えて

    所々に冗談を交えながら、お酒、食物、歴史、政治、経営、マーケティング…とあらゆるジャンルの話を繰り出す竹村社長。その引き出しの多さと造詣の深さ、そして何より、強い信念を持って前に進む力強さに圧倒されました。

    もちろん、インタビューの後は高知市内に繰り出し、土佐料理と司牡丹のお酒で「なかま」にさせていただきました(口の中に幸せが溢れるぜよ!)。竹村社長、本当にありがとうございました!!

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