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    「ハイブリッドなジャパニーズを量産していきます」
    株式会社Resorz
    代表取締役 兒嶋裕貴氏

    番組制作会社、ITベンチャーでの経験を経て起業へ

    山口:様々な海外経験を経て、最終的には一度日本に戻って来て、普通に就職されました。それがテレビ番組の制作会社というのはちょっと意外に感じます。どんなことを考えて就職したのですか。

    いろいろな国を渡り歩いて、改めて思ったのは、海外には貧しくても幸せに生きている人も沢山いるのに、日本は、経済レベルは世界最高峰なのに、どういうわけかみんな楽しく無さそうに見えるということです。皆、窮屈そうに生きていて、自殺も多い。最初は、しょうがない、そういう国なんだみたいな気持ちでいたんですが、徐々に、そうではなくて、これを何らかの形で変えていくのが自分の生きる道ではないかと思うようになってきました。

    もうひとつ思ったことが、どの国、地域でも、必ず皆が信じているものがあるということです。宗教、民族、コミュニティー、家族、信じる対象は様々ですが、とにかく人間は何かを信じないと生きられないらしい。それでは、日本人が漠然と信じてるものとは何だろうかと考えた時に、思い当たったのがメディアでした。今ならもちろんインターネットですけど、当時はまだテレビの時代。人々がメディアの情報を盲信し、そこから流れる情報がそのまま世論になってしまうというのは、世界の先進国の中でも日本に特有の現象です。そこで、メディアを作る側の業界に飛び込んでみよう、そうすることで、日本という国をより良くしていくためのヒントを得ることができるのではないかと考えたわけです。

    山口:仕事を始めてからResorzを起業するまでの経緯を教えてください。

    制作会社ではがむしゃらに働きましたが、何年かやってみて、生意気を言うようですけどテレビの限界みたいなところを感じました。既にインターネットが出てきていて、これからはテレビではなくてインターネットが優勢になっていくことは明らかでした。しかし、テレビの業界ではそれを全然認めないんです。特に偉い人になればなるほど、ネットに載っている情報なんか信じられるかという論調でした。私は、まさにそのような固定観念から脱却できないところに、テレビの限界のようなものを感じていました。

    そこで、思い切って制作会社を辞めてインターネット関連のベンチャー企業に転職しました。その会社では、私に新規事業の立ち上げる役割を振ってくれました。頭の中にアイデアだけは豊富にあったので、早速、1つサービスを立ち上げたところ、それが順調に大きくなっていって、社内の一事業部門だったものを切り離して独立した会社として運営することに。その事業会社は将来性を評価されて、最終的にはもっと大きな会社に買収されました。そういうことを2回経験しました。

    事業をゼロから立ち上げて会社にして大きな会社に買ってもらって、世間的には評価されるべきことなのかもしれないけれど、最後まで関わりたいと思っている産みの親の立場としては複雑な気持ちですよね。2回も同じ経験をして、やっぱり自分の会社でやらないとダメだと思い、このResorzを創業しました。

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    ハイブリッドなジャパニーズを量産するために

    山口:Resorzのビジョンとして「ハイブリッドなジャパニーズの量産」ということを掲げていますが、どういうことですか。

    日本と海外という両方の視点を兼ね備えているという意味で、ハイブリッドという言葉を使っています。これからの日本を引っ張っていくそういう人たちを沢山育てていきたいということで、「ハイブリッドなジャパニーズの量産」と言っています。ガラパゴス化していくんじゃなくて、外を広く見る、あるいは日本が世界に対して勝てる部分っていうのを再認識して磨いていく。そういった日本人、日本企業を増やしていくことが我々の使命だと思っています。

    山口:世界の中での日本人という視点で見たときに、どのような強みがあると思いますか。

    私が思うに、日本人の最大の長所は、柔軟に新しい物事を取り入れて、さらにそれをブラッシュアップできるということです。クリスマスの1週間後に正月の祝いをするのを、ごく自然にやれる。その矛盾を厳密に突き詰めるのではなく、大らかに受け入れて両方の良いとこ取りをしてしまう。これは素晴らしいことだと思います。だからこそ、どんどん海外に行って、そこにある良いもの、良いところをエッセンスを吸収してくるべきなんです。それを更に磨き上げたものをまた海外に持って行ったら面白いじゃないですか。

    あと、人情もろくてドライになりきれないところ、これはビジネスにおいては弱みにもなるところですが、私は強みであると考えています。ちょっと抽象的な話になってしまいますけど、グローバリゼーションというものが加速していくと、結局は、強い者が勝つということに行き着きます。その矛盾が肥大化すると、争いが避けられなくなる。今、世界中でテロが発生しているのはこのような文脈で理解することができます。そうなったときに「和を以て貴しとなす」という日本的な考え方こそが必要になってくると思うんです。日本人は世界を救うキーパーソン的な役割を担うことができるのではないか、そんな可能性すら感じています。

    山口:逆に、日本人の弱みというのはどのあたりでしょうか。

    これもいろいろありますが、やはり視点が内向きなところですかね。人口が多くて大きな国内マーケットがある、生産力も高い、サービスの質も高い。そうなると、幸か不幸か、国内にいればそれで事足りてしまいますので、外に出ていく必要が無くなってしまうんですよね。既に言われていることですが、海外に目を向けている人が増えている中で、一方の大衆の意識としてはどんどん内向きになってきて、両極化、二極化しているように感じます。

    ただ、新しい物を作り、世の中を変えていくというのは、常にマイノリティーから始まり、マイノリティーがマジョリティーを引っ張っていくのだと思います。だから、一時的に二極化していても、海外に出たいと思ってそれを実行する人達が増えて行くこと自体は決して悪い傾向ではないと思います。ここ数年の状況を見ていると、いよいよ面白くなってきたなと実感しています。

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    海外に出る上で忘れてはいけないこと

    山口:今後の海外展開を考えている日本企業に対して、アドバイスできることがあったら教えてください。

    海外展開については、労働力が安いとか、マーケットに期待が持てるという動機があることは良いのですが、やっぱり根本として重要なのは、その国、その地域に対する愛情を持っていただきたいとうことです。例えば、自分の務めている会社が外国企業に買収されて、外国人の上司がやってきたとします。ところが、その上司が全然日本のことを好きじゃなくて、母国での成功を鼻にかけて、日本人を見下し、日本の文化や習慣に馴染もうともしない。そんな上司の下で働きたいとは思いませんよね。これと同じことが、我々が海外に出た時に起こりうるということを、肝に命じておく必要があります。その国の資本や労働力を活用させていただく以上は、そこにちゃんと感謝して、何かしら恩返しをしたいというのが当然ではないでしょうか。是非、そういったことを実践していただきたいと思います。

    山口:特に若い人で、海外に留学したいとか海外で働きたいと考えてる人にアドバイスできることはありますか。

    自分の中の常識をぶっ壊すと言いましたが、その一方で、人として当たり前の本質的なことを忘れてはいけません。約束は守る、家族や友達は大切にする、何かしてもらったら感謝を伝える、他人の存在や考え方を尊重する。自分の中の価値観のぶっ壊すべきところとそうすべきではないところを、明確に区別するということです。そうじゃないと、多分、海外に行っても得るものは少ないだろうし、そこで出会った人たちに軽蔑されることにもなり兼ねません。皆さん、是非、海外で多くのことを吸収して、ハイブリッドなジャパニーズになって帰ってきて下さい。

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