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    特別インタビュー「実践する”カッコいいお金の使い方”」(後編)
    株式会社さわかみホールディングス
    代表取締役 澤上篤人氏

    澤上流子育て(山口流も少々)

    参加者:長期的な視点が必要ということで、子育ての話を聞かせてください。私は、父親になってちょうど1年になります。澤上会長が子育てについて大事にしてきたポイントは何ですか。

    うちは男の子が3人いるんだけど、親として言ってきたのは、どうせ自分の力で生きていかなければいけないんだから、とにかく運動をして、丈夫な体を作っとけということ。もう一つは、本を読みなさいということ。これだけ。高校までは出してやるから、あとは自分で生きていけという感じ。そうしたら、実際、運動はとにかくしていたし、本も確かに読んでいた。

    学歴だとか教育が重要だとか言っている人がいるけど、それで大きな会社に入ったって、今は会社が潰れる時代だからね。自分で生きていく力を持たないと駄目だ。世の中がどう変わって、何が起こっていくのかを、面白がって生きていかないとね。

    自分らが就職活動をしていたころ、ホンダが毎日のように新聞に大きな求人広告を出していた。これから伸びていく若い会社ですって宣伝していた。要するに、それだけ求人広告を出し続けないと人が集まらなかったの。だけど、今になってみると、そのときにホンダに入った人は面白かっただろうなと思わない?だから、生きていく上では、他と同じ流れの中で勝負しようとしたり、パターン化して考えたりしない方が良い。世の中はどんどん変わっていくから、そういう変化を感じ取って自分でどうすれば良いかを考える力、思ったことを実行する体力、そうったものこそが重要なんじゃないか。

    山口:今の話で思い出したのですが、私が司法試験を何回か試験を受けて合格できずにいたときに、生活費とか予備校代とかを全て親に出してもらっていたのが申し訳なくて、諦めようかなという相談をしました。そうしたら、父親が「お前に投資してるんだから、くだらないこと言ってないで、さっさと受かって早く返せ」って言ったんです。それを聞いて、私は妙に発破を掛けられた気になったんですね。私も子供がいますが、親と子の関係って、それぐらいの感覚でいいんじゃないかなと思うことがあります。

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    ビットコイン、電子マネー、SNS

    参加者:今、ビットコインとか電子マネーとか、お金以外の価値代替物が沢山出てきています。そういったものについて、どう付き合って行けばよいのでしょうか。

    今ね、新しいものが出てくると、世界中でみんなが一斉にそっちの方向を向いて進み出すでしょう。でも、一旦立ち止まって、ビットコインだろうがなんだろうが、自分で考えて使い分ける能力を高めないと。みんながやっているからやるというんじゃなくて、1人、1人が考えて使えば良い。

    ちなみに、俺、ビットコインには全く興味ないよ。よく言うんだよね、食っても美味くないものには興味ないって。本物ってやっぱり味があるじゃん。人々の生活に入り込んで、そこから富を生むことに本物の味わいがあるんじゃないの。ビットコインなんて、単にデジタル化した数字でしょう。それに何の価値があるのかわからない。

    山口:私から、関連する質問を一つ。今、我々の生活にSNSがすごく浸透していますが、澤上会長はSNSを利用されていますか。また、SNSについてどう思っていらっしゃいますか。

    SNSは利用してないです。そんなことやって喜んでいる暇なんて無いもの。なんでわざわざ横の人と繋がらないといけないの?自分、お先にごめんって言って走ってるのに、走らない人と繋がって喜んでる暇なんてない。全く興味ない。

    それと、今、繋がるって言ったけれど、SNSっていうのはデジタルで情報交換しているだけで、本当の意味では繋がってないと思う。やっぱり人間だから、笑顔を見たいとか、会いたいとか思いがあるでしょう。そういう温もりがあるのが人と人とのつながりだと思うわけ。だから、俺にはSNSはつまらない。

    日本のものづくりは大丈夫か

    参加者:デザイン会社を経営している者です。私は、ものづくりというところに執着していて、そこにデザイン面からアプローチしています。しかし、日本のものづくりは衰退する一方で、二度とものづくり大国には戻れないという見解も見聞きします。澤上会長のご意見はいかがでしょうか。

    自分は、結構自信を持って、日本のものづくりは最後まで生き残ると考えています。なぜかわかるかな?(しばし会場に問いかける)日本人って、細部にこだわるでしょう。そういう人種って、世界でもあんまりいないの。ニューヨークのすごいホテルなんかに行くと、ものすごくきらびやかなんだけど、実は細部を見ると結構いい加減だったりする。職人も、イタリアとかドイツのトップクラスの人は例外として、大方の人は意外と適当にやっちゃう。ところが、日本の職人さんたちは、皆、小さな所にまでこだわるじゃない。もうちょっと、もう少しって。この、もうちょっと、もう少しっていうメンタリティは、世界に誇れる特徴だよ。簡単には真似できない。

    ビジネス、経営をする上では、皆と同じことをやってちゃ駄目。誰もできないようなことをやったほうが良い。だから、ITはアメリカにやらしておけばいいじゃん、我々は、他の国の人が真似できないものづくりをしようよ。世の中から物がなくなるわけないよね、デザインも含めて。最終的に物を使うのは人間だ。だから、人間がどう使い、どう価値を感じるかを考えてものづくりをすることは、絶対に必要なことなんだ。

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    貧富の差は埋まるのか

    参加者:私は、10年ほど前から途上国の人たちを支援するNPOの活動を行っています。ところが、少し前に、ある調査結果で、富裕層上位の8人の方の資産が世界人口の半分に当たる36億7,500万人の方の資産と同等だということが発表されていて、愕然としました。どうやったらこの格差を解消していけるのか、澤上会長の考えをお聞かせください。

    世の中にはえげつないことしている人たちがいっぱいいるけど、あの人たちに付ける薬はないよ。どんどん走っていって、どんどんえげつなくなっていって、本人たちは全く悪びれていない。贅沢しまくって、それでも使い切れなくて、気の毒に、ドラッグに走ったり、ものすごく享楽的な生活したりとか。

    そういう人たちのことは横へ置いておいて、我々、こちら側の人たちがどうやったらもっと豊かに生きていけるのかなということを考えるべきだと思う。有効な方法論を一つでも打ち出して輪を広げてこう。自分たちが長期投資をやっているのも、そういう闘いの一環だと思っている。

    世の中を一斉には変えることはできないから、身近なところから変えて影響を広げていけばいい。日本の人口は1億2,700万人だけど、仮にそのうちの5,000万人が長期投資をやったら、日本の経済、いや、日本という国がガラッと変わるよ。日本はとても素敵な落ち着きのある経済、社会になってるねと、世界から注目されるようになる。そうしたら、今度は世界中に長期投資が広まる。そういう動きが30億の人たちに広まったら、最初に言ったようなえげつない連中なんて、自然に出番がなくなるはずだ。

    澤上篤人の使命とは

    参加者:会社を経営している者です。澤上会長は投資という形で会社を応援していらっしゃいますが、可能性のある会社について、もっと直接的に経営を担う形で入っていくということはされないのでしょうか。

    1人で直接会社を経営するのは2つか、3つくらいがせいぜいだと思うけど、それよりも、できるだけ多くの人たちと一緒に10年、20年くらいかけて、じっくりと沢山の良い会社と付き合っていった方が面白い。自分は、そっちの方が重要だと思っている。

    自分がやっているのは、生活者投資家、応援株主をうんと増やしてこうということ。皆さん1人、1人が生活者として、自分たちの生活に必要な企業のパートナーになって、とことん応援していく。生活者投資家が増えれば、株主が訳の分からないプロ経営者とやらを求めるなんてことは絶対にあり得ない。信頼できる人たちにしっかりと経営をしてもらおうということになる。つまり、生活者投資家が増えていけば、良い会社は経営にも力が入って、もっと良い会社になる。さっきも言ったけど、日本中で5,000万の人たちが生活者投資家になったら、すごいことになるよ。そういう枠組みを作るのが自分の使命だと思ってやってます。

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