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    特別インタビュー「実践する”カッコいいお金の使い方”」(後編)
    株式会社さわかみホールディングス
    代表取締役 澤上篤人氏

    弁護士山口智寛が時代をリードするリーダーたちに突撃インタビューを敢行するシリーズ。新春特別企画として、日本の長期投資の第一人者、株式会社さわかみホールディングス代表取締役の澤上篤人氏をゲスト講師にお招きし、やまラボの読者の方々の前で長期投資の根底にある人生論について公開インタビューさせていただきました。前回に引き続き、後編として、会場の皆様から出た質問に対する澤上会長の回答をお届けします。

    なぜオペラの支援をしているのか

    参加者:さわかみファンドでは、オペラ財団を作ってオペラを支援されていますね。大変素晴らしいことだと注目しています。しかし、昨年、サントリーホールの公演を観に行ったところ、観客席に空席が目立ち、集客の努力が足りないのではないかと感じました。今後はどのような展望をお持ちでしょうか。

    オペラ財団の活動について知らない人もいると思うので、まずはここからお話しします。うちの会社の佐藤っていう男性社員が、ローマで指揮者の修業をしているマエストロ吉田という人と面識を持った。それが、そもそものきっかけです。彼が日本に来た時に会ってみたら、やたらに面白い人物で、単に世界的な指揮者になることが夢なだけじゃなくて、「日本にオペラ文化を広げたい。1曲だけでもいいから、あのカルメンのように、世界中の人々が口ずさんでくれるような日本語のオペラを出したい。」ということを熱く語る。そんな彼に対して、「もっともっと世界レベルで勝負をしろよ、日本には戻ってくるな」と言ったわけ。そしたら、あっという間に本当にマントヴァで音楽監督になって、さらに、日本人で初めてボローニャ歌劇場フィルハーモニーの芸術監督にまでなっちゃった。

    あるときマエストロ吉田と話していたら、おかしな展開になった。彼がイタリアで指揮者として勝負している以上、もう一つの夢である日本でオペラを広げるという活動はできそうにもない。ということは、「日本にいる俺がやるしかないではないか」ということになった。こういう経緯で「さわかみオペラ芸術振興財団」を設立することになった。

    今、やろうとしてるのは、日本にオペラ文化を広めるということと、日本語のオペラ曲を世界に出すということ。オペラの文化といっても、元からオペラが好きな人たちのためということではなくて、今までオペラを聞いたことがない人に、オペラってこんな素敵なものなんだと知ってもらいたい。できるだけ多くの人にオペラを楽しんでもらいたいから、姫路でやった時は、立見席を1,000円にした。昨年、奈良でトゥーランドットをやったときは、後ろの方の席が2,000円。もちろん大赤字。

    だけど、事業として継続的にやるんだったら、どこかで採算をとらないと駄目だ。ファンクラブとか賛助会員を増やして、裾野を広げてくことも必要。あと、質問にあった集客、これも完全に力不足を露呈してしまったから、今後は広報にも力を入れなければならない。こういうことを走りながら考えて手を打っていきます。サントリーホールの公演は、今年もあるので、是非、お出でください。

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    株主と会社の理想的な関係のあり方

    参加者:人材とか組織に関する仕事をしている者です。本日の講演で出ていたように、先を見据えて動いている会社を見ることもありますが、残念ながら、実際には、短く当面の業績だけを追いかけている会社や経営者の方が多いと感じています。澤上会長は、会社や経営者のどのような点をご覧になっていて、また、彼らに対してどのようなことを期待されているでしょうか。

    経済成長期には大企業が潰れることなど考えられなかったけれど、去年、シャープが台湾の企業に身売りしたように、成熟経済となった今はいくらでも起こり得る。それに対し、会社としては、プロの経営者とやらを雇って短期で業績を上げようと躍起になる。株主も、短期で株価が上がってほしいから、これを要求する。年金運用とかの機関投資家も大株主としての存在を背景にして、短期の利益を求める風潮が定着してしまっている。これは日本だけではなくて、世界全体の傾向です。

    その結果、プロ経営者とかいう人たちが2,3年くらいで業績をちょっと良くして、株価を上げたら、凄いって言われる。立派な学歴があるのかもしれないけれど、やっていることは要するに会社のお金を使って博打を打っているのと同じ。自分のお金を一円も使っていないのに、あとは野となれ山となれとばかりに、自ら会社を切り刻んでいるようなものじゃないか。そして、とんでもない高額の給料を持っていってしまう。

    長期投資の視点というのはこれとは全然違っていて、株主は会社を応援することで一緒に良い世の中を作っていこうという発想だ。例えば、株価が低くて苦しんでいるときに、株を買って株主になってあげる。従業員や地域住民が自分たちの工場を守ろうと、どんどん応援株主になれば、短期の利益を求める年金マネーやアクティビストやらは手も足も出なくなる。そう言った生活者株主という意識が高まってきたら、経営サイドも、当然、だらだらしてはいられない。頑張って働いて、もっと良い会社にして、株価を上げてやろうということになる。これが正しい世の中のあり方じゃないか。

    自分なんか、よく企業の工場に行って、従業員とかその奥さんたちと話をする。我々も皆さんと運命共同体だよって。我々、生活者投資家が世の中を正しくしていかなきゃいけない。皆さん、これ、一緒にやりましょうよ。

    問題へのアプローチ方法

    参加者:私は、大学2年生です。広く、深く、遠く考えるという話をお聞きして、自分もそうしたいと思うのですが、実際には、よくわからないことに直面して、それを調べても更にわからないことができて、どんどんわからないことが広がっていくような感じがします。そこで、自分が向き合うべき問題をどう見つけて、そのためにどう努力していけばいいのかを教えてください。

    向き合うべき問題とか決め打ちするのは、ちょっと考え過ぎじゃないかな。自分で感じて、これ違うんじゃないかな、おかしいなと思ったら、何がおかしいのかをよく観察してみる。そのうちに、一つでも気付いたことがあったら、それをまず行動に移してみる。気が付いたところから動けということだ。行動しながらさらに考えていけばいい。

    例えば、昨日も勉強会をやったんだけど、中学生、高校生の女の子で、DVに遭ったとか、お父さんの子を身ごもっちゃったという子たちがいる。そういう理不尽なことって世の中にはいっぱいあるわけ。聞けば聞くほど、見て見ぬ振りはできないと心から思えてくる。自分がちょっとでもできることはないか。何ができるか、どうしたらいいか。一人ではできないなら、どうしたら多くの人の力を集められるか。

    要するに、世の中を観察して、そこで何かを感じて、それに対して人間としてどう行動するかということだ。行動すれば、何がわからないかかがわかってくるし、勉強が楽しくなる。学者の書いた分厚い本を読み通そうとしても、眠くなるだけでしょ。でも、わからないことがあって、辞書を引くように専門書を調べていると、全然眠くならないからね。本当に身になる勉強ってそういうものじゃない?

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