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    特別インタビュー「実践する”カッコいいお金の使い方”」(前編)
    株式会社さわかみホールディングス
    代表取締役 澤上篤人氏

    日本人はなぜ将来に不安を抱くのか

    山口:日本という国は、客観的に見ると世界最大の債権保有国ですし、工業生産力、技術力は世界最高水準です。私も留学中は、いろいろな国の人から、日本は素晴らしい国だという意見をたくさん聞きました。ところが、肝心の日本人は、必ずしも日々幸せを感じて生きているわけではなく、それどころか、将来について後ろ暗い不安を感じている。これはどういうことなのでしょうか。

    日本経済はかつてものすごい高度成長をしたけれど、それを生み出していたのは何だと思う?なんでこんなにも高度成長したのか?ここのところをしっかり考えてみよう。(しばし会場に問いかける)わからないかな。

    みんな、国民は豊かな生活を求めて、次から次へと欲しい物を買っていった。戦後は焼け野原だったから、最初はとにかく食べるものと着るもの、あとトタン屋根が必需品だった。ちょっと良くなってきたら、ラジオ、洗濯機、炊飯器、冷蔵庫。その後は、白黒テレビ、カラーテレビ、ビデオ、車、クーラー、マイホーム、オーディオ。皆が豊かな生活に憧れて、必死に働いて得た給料で、次から次へと欲しいモノを買い揃えていった。お金を使いまくった。お金を使うと、経済がまわる。国の政策なんて関係ないよ。みんながどんどん物を買えば、企業は工場を建てる。工場を建てたら仕事ができる、雇用が生まれる、給料もよくなる。さらに買う。マイホームブームが来たから、住宅用地の値段もどんどん上がっていった。

    じゃあ、今はなんで駄目になった?みんないろいろな物がそろっちゃって、もう買いたいものが無くなっちゃった。ちょっと前のiPhoneみたいなのも稀にあるけれど、基本的にはもう買い替え需要しかない。洗濯機を買ったら、何年ぐらい使う?10年くらいは使うんじゃない? 10年に1回しか買わなくなると、製品を作っていた工場は余ってしまう。日本では余ってしまった工場を中国に移そうということになる。そうすると、日本国内では雇用じゃなくて失業が増える。給料は下がる。だからみんな不安になって、消費を控えるようになる。こういう成熟経済の悪循環に陥っている。

    今の日本は、個人の預貯金残高だけでも841兆円あるんだよ。日本のGDPが、大体490兆円から510兆円くらい。つまり、GDPに対し1.7倍のお金が預貯金として積み上がっている。これはつまり、お金が全然働いてないってことだ。

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    山口:お金が循環しなくなって、日本の経済に勢いが無くなってきて、日本人は明るい見通しを持てなくなって自信を失ってきた。そうすると、我々が未来に希望を持つためには、お金に働いてもらうということがポイントになってきそうです。具体的にはどうしたら良いのでしょうか。

    方法は2つある。1つは、日本人全員が家や家電製品を全部燃やしたりぶっ壊して、みんな貧しくなればいい。そうするともう1回やり直ししなきゃいけない。だけど、もちろんそれは現実的ではないね。

    そうすると、もう1つの方法、お金を使えばいい。要するに、あえて消費を産み出すということだ。例えば、今、日本の人口は1億2,710万人、この人たちが1週間の間に10万円を使ったとしよう。パチンコでも旅行でもコンサートでも、なんでも良いよ。とにかく10万円使う。そうすると、1週間で12兆7,000億円の消費がポンと生まれる。これだけで日本のGDPは2.2%増大する。

    あるいは、さっき言った個人預貯金残高の1%、8兆4,000億円が寄付に回されたら、それだけでもGDPは1.7%増大する。たった1%だよ。もし2%が寄付にまわればGDPは3.4%増大だ。結局、国がアベノミクスだなんだって言うよりも、われわれが直接お金をつかうことのインパクトの方が遥かに大きい。

    成熟社会における行動指標とは

    山口:思いがけず、お金の使い方の話に戻ってきました。それでは、身の回りの物資が満ち足りている現代社会において、実際にどのようにお金を使えば良いのでしょうか。個人のささやかな消費のレベルでも、格好いいお金の使い方というものがあるのでしょうか。

    昔とは違って生活必需品は既にそろっている。これから考えないといけないのは、今持っているお金をどう使うかだよね。ここに今日のテーマ、格好いいお金の使い方というのが絡んでくる。最初に話したように、格好良くお金使うことは、格好良く生きるということだ。しかも、皆がお金を使えば、経済も回る、給料は増える、財産はもっと増える。

    では、何にお金を使うのか。とりあえず、贅沢だと思うことにどんどんお金を使ってみなよ。どうせ、すぐ飽きるから。そうしたら自然に何が大切なのかっていうことに気付く。お金をどんどん使うと、不思議とみんな、文化、教育、芸術、スポーツ、技術、寄付、NPO、ボランティア…こういう方向にお金を使うようになる。物質的な満足ではなくて、心の満足という方向だ。みんなが心の満足にお金を使うようになると、結果として、芸術とかスポーツとかそういう産業が発展するようになる。これは明らかに世の中が良くなっていくということだよね。

    成熟社会、成熟経済においては、心の充足を求めた結果として経済が拡大するということになる。日本の政治家や学者は、この本質的なことがわかってないんだ。みんなが自覚して、1人、1人が良い世の中のためにとお金に働いてもらう。そういった動きが出てきたら、日本経済はたちまち活性化するよ。どう、皆さん。すぐに実践したら良いと思わない?そう考えたのなら、実践しなきゃ駄目だよ。思考するだけじゃなくて、行動するんだ。

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    澤上流思考術、勉強術

    山口:思考と行動というお話が出ました。澤上会長は、長期投資というものは頭を使って行動することが大切だというお話をたくさんされていますが、まず、どういうスタンスで物事について思考するのでしょうか。

    今、山口さんは、考えて行動するという話をしたけれど、考える前に、まず観察することが重要だよ。今日は、冒頭からずっと人の生き方に関する話をしているけれども、結局、世の中があってこそ、そこでどう生きるかということを考えるわけだからね。

    まず、我々が生きているこの世の中を観察して、それから自分は何ができるか、どうやって生きていくかということを考える。そういう作業をしていると、わからないことばっかり出てくる。わからないことが出てきたら、勉強する。つまり、まず観察して問題意識を持つ。問題意識を持ったら、問題の解決方法を探るために勉強するということ。

    山口:よく「広く、深く、遠く考える」ともおっしゃっていますね。

    例えば、今の現代社会情勢を観察すると、アメリカのトランプ大統領を始めとするポピュリズムの勢力が台頭してきていることが見て取れるよね。そうしたら、ポピュリズムの由来や傾向は何なのか、どんな末路が待っているのかっていう問題意識が出てくるはず。それで、どういう社会背景の時に出てきてどう終わったのかとか、歴史を勉強してみる。勉強することによって、ただトランプが出てきて大変だとか騒ぐのではなくて、自分なりの対応ができるようになる。自分はこう行動しようかとか、はっきりしてくるでしょう。行動につながっていくわけ。

    こういうことは自分でやるからこそ身につく。言っちゃ悪いけど、学校で先生に教わってノート取って覚えたって、全然役に立たないからね。

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