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    特別インタビュー「実践する”カッコいいお金の使い方”」(前編)
    株式会社さわかみホールディングス
    代表取締役 澤上篤人氏

    弁護士山口智寛が時代をリードするリーダーたちに突撃インタビューを敢行するシリーズ。新春特別企画として、日本の長期投資の第一人者、株式会社さわかみホールディングス代表取締役の澤上篤人氏をゲスト講師にお招きし、やまラボの読者の方々の前で長期投資の根底にある人生論について公開インタビューさせていただきました。今回は前編です。

    【さわかみ投信株式会社概要】(2017年3月現在)

    所 在:東京都千代田区一番町29-2
    設 立:1996年7月4日
    事業内容:投資信託・長期投資・資産運用のための「さわかみファンド」を運用・販売
    資本金:3億2000万円
    Webサイト:http://www.sawakami.co.jp/

    【澤上篤人プロフィール】

    1947 年 3 月 28 日生まれ 愛知県出身
    1970年から74年までスイス・キャピタル・インターナショナルにてアナリスト兼ファンドアドバイザー。その後、80年から96年までピクテ・ジャパン代表を務める。
    96年にさわかみ投資顧問(現 さわかみ投信)を設立し、99年には「さわかみファンド」を設定。
    これまで「さわかみファンド」1本のみの運用で純資産は 3,025億円、顧客数は 11.5万人(数字は2017年3月16日時点のもの)を超え、日本における長期運用のパイオニアとして熱い支持を集めている。また昨今は「お金の使い方」のモデルとなるべく財団活動に積極的。

    格好いいお金の使い方、格好いい生き方とは

    山口:澤上会長は、世界中で様々な方と会っていらっしゃると思います。今回のテーマは「格好いいお金の使い方」ということで、この人のこういうお金の使い方は格好良いなと思った経験があれば、ご紹介いただけますでしょうか。

    いくらでも話せるテーマだけど、時間が限られているので2つの例だけ紹介するよ。今から45、6年くらい前に、ジュネーブの投資会社でアナリストの仕事をしていたときに、先輩のオランダ人ピーターとアムステルダムに企業訪問行くことになった。日帰りだから、二人とも小さな荷物しか持っていない。それでも、ピーターはジュネーブの駅に着いたら赤帽(※駅で荷物運んでチップを得て生活の糧にしている人)に自分の小さなバッグを渡すんだ。「そんな軽いの俺が持つよ」って言ってやったら、ピータはそういうことじゃないと言う。「赤帽の人たちは、ここで仕事をして得たささやかなお金で家族を養っている。僕たちが彼らに荷物を持ってもらうことで、その人の家族の生活が成り立つ。世の中はそういう風にできているんだ。」とね。ほんのちょっとしたことでも、お金使うことが社会を動かしていくということを、実践で学んだ。

    もう1つ、香港の初代大君(タイクーン)のチャンさんの話。この人は凄まじかった。彼は、ウォールストリートジャーナルに2回も「T.H.Chanはこれで没落だ」と書かれた。中国共産党が香港に攻め込んでくるとかの騒ぎで、香港にいた人たちが皆海外へ逃げ出そうとする騒ぎが何度かあった。その度に、チャンさんは、その人達が処分したい財産を全部引き受けちゃう。その頃、実は、自分は月に4回とか5回香港に行っていて、しょっちゅうチャンさんと会っていた。「チャンさん、大丈夫?」って聞くと、「自分が成した財は自分のためのものじゃなくて、香港の人のためのものだ。俺はどうせ難民上がりでゼロから来たんだから、ゼロになったっていい。」と言う。実際は、ゼロどころか借金しまくって香港から逃げようとする人々の財産を引き受けてたんだけどね。しばらくして、事態が落ち着くと、みんな戻ってくる。戻ってきたら、彼は財産の買い戻しに応じてあげる。その時は彼が二束三文で引き受けた財産の値段も上がってるから、買い戻しに応じるだけで財産が何倍にもなっちゃう。みんなのためにお金を使って、喜ばれて、ありがとうと言われながらも資産が倍増していく。こういうお金の使い方って最高に格好良いでしょう。

    山口:さわかみ投信の職場精神には「ギブ、ギブ、ギブ、ギブ、ギブ、とことんギブ、そしていつかはギブン」とあります。今のお話はこれに通じるものですね。

    ノブレス・オブリージュって聞いたことあるかな。フランス語で「高貴なところに生まれし者の責任」っていう意味だが、本当はもっと普遍的な価値観を指している。さっき挙げたような人たちは、とんでもない能力を授かって生まれてきたけれども、それは決して自分のためではない。自分に与えられた能力を世の中のために使うことがミッションなんだという意識を持っている。そういう意識が根底にあると、やみくもに金儲けしてやろうとか、人を騙してやろうとか、そんな低次元な発想は出てこない。

    すごい人たちと一緒に仕事をしてきて、自分が世の中に貢献できることを、とことんやってやろうという精神を学んだ。それを言葉にすると「とことんギブ」という表現になった。それでとことんやってみて、どこかでリターンが得られたらいいじゃないの。ということで「いつかはギブン」。決して、ただただリターンを追い求めているわけじゃないんだ。

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    優雅なる節約とは?

    山口:そうは言っても、澤上会長ほどの立場ともなると、自分のためにお金を使って贅沢な暮らしをしているのではないかと考えてしまうのですが…

    毎日すごく質素な生活を送っているよ。豪勢な食事なんてしてない、ギョウザ大好き、ビール1本付けたら最高じゃん。今日着ているこのブレザーとシャツ、もう何年も着ている。大切に使えば長持ちするよ。贅沢には本当に興味がない。

    自分はおかげさまで生かしていただいている。自分に「私する」んじゃなくて、世の中、人のために「資する」。そう思ったら、自然に質素になるよ。

    山口:それは本当に格好良い生き方だと思います。ただ、学生や若い人は、あまり収入が無くてギリギリの生活を送っている人も多いと思います。そのような状況だと、格好良いとか悪いとか言う前に、そもそも経済的に自立することが重要ではないですか?

    最初から給料低い、お金無いなんて言ってたら、いつまでたっても経済的自立なんて無理。じゃあ、どうするか。「優雅なる節約」って言ってるんだけど、とりあえず1カ月の間だけ、ゲーム感覚で毎日メチャクチャに節約してみる。例えば、一杯飲んだ後、仕上げのラーメンを食べていたのをやめてみるとか、飲み会を減らしてみる。あるいは、家事はなるべく料金の安い深夜電力を使うようにする。家族で風呂に入るときには、できるだけ追い焚きしないように集中的に入るとかね。

    ありとあらゆるムダの削ぎ落し作業をゲーム感覚でやってみると、ビックリするほどお金が浮いてくるもの。手取りで16万円ぐらいの収入があるとして、仮に3万円浮いたとしようか。その浮いた中でも、辛かったり寂しい気持ちになったもの、これは自分によって価値のあるお金の使い方だったということだね。だから、その分は復活させてあげよう。でも、それ以外の分は、節約できるもの、もともと無駄に出費していたものだ。3万円浮いて、7000円復活させたとしても、2万3000円浮くじゃん。こいつを長期投資に回すわけ。これを10年、20年やったら、相当な資産規模になる。

    改めて、なんで「優雅なる節約」って言うのか。節約しようと思って実験してみると、自分自身のことがよくわかる。自分の生き方、自分の生活、自分の価値観というものがわかる。本当に大事なことと、捨てても良いこととが区別できるようになる。そこが重要なんだ。

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