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    「データ活用の一番のメリットは意思決定を脱属人化できることです」
    データサイエンティスト 加藤恭央氏

    データサイエンティストへの道のり

    山口:時間軸をさかのぼらせて昔のお話をお聞きします。どのような経緯で現在のお仕事をするに至りましたか。

    経済を動かしているのはお金ですので、就職する際にはお金を扱う職種に付きたいと思っていました。ちょうど最初の就職先の会社が経理への配属前提で募集をしていたので、これは良いと思ってエントリーしたら採用してもらえました。

    配属先は、工場の中で利益が出ているのかどうかという計算を行う、いわゆる原価計算の専門部隊でした。最初はその数字の分析が非常に難しかったのですが、理解が深まるうちにすごく面白くなってきました。数字を見ることで工場でのオペレーションの良し悪しが工程レベルでわかってしまうというのが、新鮮な驚きだったのです。

    次第にもっとデータ分析を主軸にした仕事をしたいと思うようになり、ちょうど縁があって今の会社に入ってデータマイニングをやり始めました。

    山口:最近では最初からデータサイエンティストになることを目指して勉強する人も増えていると聞きます。体系立ったノウハウや、前提として抑えておくべき分野というものはあるのでしょうか。

    基本的には、統計とある程度のプログラミング能力が必要です。あとは、データサインティストにもいろいろな属性があるので、どのような形で仕事をしたいかによって必要とされるスキルが異なってきます。私のようにコンサルティングまで請負うのであれば、やはり、企業活動や人間活動と言ったデータの裏にある生の社会実態に対する理解が意味を持ってくると思います。

    うちの会社でも、新卒の新入社員には最初は技術開発を頑張ってもらいますが、徐々にお客さまとのディスカッションに参加させています。「こういうことで困っている」という相談が出てきますので、それに対して「こういう解決方法があるのではないか」というやりとりをする。そこを経験することで、データ分析と現場のオペレーションを繋げるイメージができるようになります。

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    大病を乗り越えて

    山口:加藤さんは過去に二度、急性骨髄性白血病を患っています。病気を克服して仕事に対する考え方が変わったということはありますか。

    関与しているプロジェクトが自分の病気のためにストップしてしまうという経験を二度もしました。一生懸命頑張って積み上げたものが、ほんのちょっとのボタンの掛け違いで全部がリセットされてしまうというのは本当に悔しくて、そういうことがまた起きるのではないかいう恐怖感があるのは確かです。一方で、目の前にある仕事を何となく後回しにしたりせずに、今できることを最大限やろうというモチベーションにも繋がってもいます。

    それと、命の危険に直面して、家族を始めとしていろいろな人に支えてもらい、会社や医療といったモノにも助けてもらって、単純ですけれどそこに対する感謝の気持ちは非常に大きいものがあります。どのような形であれ恩返しをしたいと思っています。

    山口:医療分野はデータ分析と親和性があるのではないでしょうか。

    非常に親和性がありますね。生存率の算出や薬の投与量の決定など、既に広範囲にわたり統計が活用されています。まだ実際には手掛けたことは無いのですが、私個人として医療に救われた経験もあるので、医療分野には是非関わっていきたいです。ウエアラブルデバイスの普及などもあって、人々の生活習慣に関連するデータがすごく取りやすくなっていますよね。これを活用することで、重篤な症状に至る前に予防治療をすることが可能になり、一人一人のいわゆるクオリティ・オブ・ライフを向上させることができると思います。

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    ビッグデータ、人工知能の先にあるものとは?

    山口:ビッグデータの活用に関する研究が進んでいますが、今後どのような形で進展していくと予想されますか。

    更なるビッグデータの生成や、より精度の高い活用人工知能などのアルゴリズム開発は今後も日進月歩で進んでいくと思います。そのようにしてビッグデータの存在を背景として人工知能が発達していくと、今まで人が独占していた意思決定の領域が、徐々に人の手から離れていくと思います。

    今はまだ、データ分析の結果を踏まえた最終的な意思決定、決裁のところは人がコントロールしているケースが多いですが、意思決定まで一気通貫で人工知能に代替させることが技術的に可能な領域はかなりあります。そこまでアルゴリズムを組んでしまえば、極端な話、あとはモニターする人がいればいいだけということになります。そこまで進展すると、企業活動における人の活動領域が、草の根的な現場仕事か、会社経営の根幹に関わる最上位の領域かに二極化していくのではないでしょうか。これは我々人間にとってはなかなかつらいところです。

    山口:人の個人情報はどんどん吸い上げられ、さらに、人の経済活動の領域は徐々に狭まっていく。そうすると、私達が有意義な人生を送るためにはどうすれば良いのでしょうか。

    いつの時代もそうですが、技術革新を拒絶するのではなく使いこなす側に回り、上手に付き合うというスタンスが必要なのだと思います。ビッグデータとか人工知能というといかにも恐ろしいもののように聞こえますが、人が開発したものであり決して万能ではなく、コントロール可能なものです。少なくとも、ある方向性をもって処理が進んでいくようにするための最初の指示出しが必要です。それをコントロールするのは人なので、方向性を間違わなければ、経済効率、生活レベルといったものを向上させるための手段として活用でき、変に自分が脅かされることにはならないはずです。

    むしろ問題なのは、そういった技術を悪用しようとする人がいることです。つまり、銃規制やドローン規制等と同じで、本質的にはユーザーとしての人の側の問題なのだと思います。何も、技術革新が生み出した未知の問題に遭遇しているわけではないと理解しています。

    世界を広げていくために

    山口:加藤さん個人としての今後の展望をお聞かせください。

    まず大きなスタンスのことで言うと、私がこの仕事をやっていて一番面白いと思うのは、仕事を通じていろいろな人と繋がって世界を広げていけるという点なので、今後も歩みを止めることなく沢山の人と様々な取り組みをしていきたいですね。

    具体的な業務レベルのことで言うと、現在は、お客さまからの依頼に基づいて一つ一つ独立したプロジェクトとしてデータ分析を行っていて、これはこれでとても好きですけど、将来的にはデータ分析を核にした独自のビジネスを世の中に普及させたいという思いがあります。データ分析を課題解決のために使う段階から一歩進んで、データ分析を活用した新しいオリジナルなビジネスを作り上げるということです。今のところ一番可能性を感じるのは金融分野ですね。データ分析業務の一つの到達点として、是非取り組んでみたいと思っています。

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