• s_DSC_0920_2

    「データ活用の一番のメリットは意思決定を脱属人化できることです」
    データサイエンティスト 加藤恭央氏

    弁護士山口智寛が時代をリードするリーダーたちに突撃インタビューを敢行するシリーズ。今回は、データサイエンティストの加藤恭央氏にインタビューに応じていただきました。データ分析が企業活動にどのように役立つのか、人工知能の発達の先にあるものは何か、興味深い話が盛り沢山です。

    【加藤恭央プロフィール】

    1977年 東京都生まれ
    2000年 一橋大学法学部卒業、ファナック株式会社入社
    2004年 株式会社ブレインチャイルド入社
    2010年 サンユー工業株式会社入社
    2014年 株式会社ブレインチャイルド復帰
    現在は同社の常務取締役

    大手メーカーでのデータ分析業務を経て、株式会社ブレインチャイルド創業時よりデータサイエンティストとして執務(一時退社期間の後に同社に復帰)。統計的なデータ分析に留まらず「データを活用した経営」のコンサルティングを請負う。2003年と2007年に急性骨髄性白血病を患った経験から、献血推進運動にも積極的に取り組んでいる。3人の子どもの父親。趣味は武道全般と登山。

    データサイエンティストの業務はどのようなものか

    山口:データサイエンティストしての加藤さんの仕事内容を具体的に教えてください。

    一言で言うと、データを使って企業の経営課題を解決する仕事です。私の場合、単にデータを分析する作業のみを請負うのではなく、データ活用の道筋を描くところ、いわゆるコンサルティングの部分から関わっているというのが大きな特徴です。そのため、統計アルゴリズムを組んだりデータを処理したりという作業以外にも、お客さまのニーズを聞いたり、こちらから解決方法を提案したりする業務の割合がかなりあります。

    今でこそデータサイエンスというスマートな名称が普及していますが、一昔前は、データの山から金脈や鉱脈を発掘(mine)するという意味で、データマイニングと呼ぶのが一般的でした。仕事内容をイメージするには、こちらの呼び方の方がわかりやすいかと思います。実際、データ分析作業というのは非常に地道なものですので、私はむしろデータマイニングという何となく泥臭い感じの方がフィットする気がしますね。

    山口:一般的な経営に関するコンサルティングとデータを活用したコンサルティングというのは、どこが違うのでしょうか。

    一般的な経営コンサルティングであれば、例えばマーケティング活動をするのに若年層を取り込みたいという場合、若年層への訴求効果が大きいテレビCMを作ろうとか、若者に人気のタレントを起用しようとか、もちろん一定のデータの根拠があってのことですが、定性的なアプローチを併用することが多いと思います。

    一方、データを活用したコンサルティングは定量的なアプローチをとります。集まったデータを解析することで一定の傾向が見えてきますので、我々は基本的には判断材料を提供するだけです。良くも悪くも、データから導き出されるシナリオの範囲でしか語ることができないのです。

    s_IMG_0190

    山口:経営上の課題解決において、データを活用した場合の方が精度、正確性が上がるのでしょうか。

    精度や正確性については、必ずしも圧倒的な優位性があるとは言えないと思います。優秀なコンサルタントであれば、データ分析した結果と同じ、あるいはそれ以上の解決策を経験的に導き出すことができますので。

    実は、データを活用する一番のメリットは、精度や正確性というところではなく、意思決定のプロセスを再現性ある形で脱属人化できるというところにあります。例えば、貸金業者が顧客に対する融資の審査を行う場合、熟練した審査担当者であれば、与えられた情報を元にスムーズに融資の可否や限度を判断することができますが、新人に同じことをやれと言っても無理な話です。ところが、過去の融資における顧客情報、返済実績、滞納状況などのデータから傾向を分析してアルゴリズムを組んでおけば、一瞬で「Aさんのリスクは何%ぐらいだから、融資の上限はこれくらい」という判断ができるようになります。

    もう一つ例をあげると、小売事業者の店舗の出店計画について、経験のある開発担当者であれば自らのノウハウに基いて「売れる」「売れない」を判断できるわけですが、そういう人材を育てるのには時間と労力がかかります。そこで、人口や交通量等の具体的なデータから、「ここに出店したらこれくらい売れる」というシミュレーションをして、それをもって出店するかしないかを決定するわけです。

    技術革新がもたらした業務内容の変化

    山口:データ分析作業では、一定の法則を見つけ出してアルゴリズムを組むまでは、生のデータを手探りで見るのですか。

    最初のうちはやっぱりそうですね。お客さまの業務内容と課題を理解して、データを理解して、それからお客さまの業務オペレーションとデータを結びつけるためにいろいろな集計をしてみます。このようにして徐々に理解を深めていくというプロセスはどうしても必要になります。

    ただ、一昔前は本当に一つのアルゴリズムを作るのに多大な労力を割いてトライ&エラーを繰り返していましたが、今では全部とは言わないまでもある程度は人工知能で代替できるようになってきたので、技術的にはだいぶ楽になりましたね。

    s_IMG_0241

    山口:技術的な部分での負担が減ったことで、業務内容に変化はありましたか。

    人工知能にしろ、機械学習にしろ、その他の統計アルゴリズムにしろ、最も重要なのは「どのように使うか」です。データ分析に関する技術的な問題解決が容易になった分、より本質的な部分、どういうデータの作り方をして、何を予測させて、出てきた結果をどのように活かすのかという点に力を注ぐことができるようになりました。

    特に、データ分析の結果を活用するという点に関して言うと、お客さまの現場における具体的な業務フローのレベルにまで落としこむことができなければ課題を解決したとは言えませんので、ここは腕の見せ所だと思っています。先ほどの貸金業者の例で言うと、オペレーターの方が手元でキー操作をしたら画面にスコアが表示される、例えばそういうソフトウエアの開発を提案し実行するというようなことです。

    Facebookは人工知能を使って被写体の顔認証を行い、自動的にタグ付けをする機能がありますよね。ああいうものは「顔認証を使って自動的なタグ付けできたらいいよね」と考える側と、実際にその技術的を提供できる側がいて、その両輪をうまく連携させて実現に向けて舵をとることが必要です。これは、人工知能でも代替できない役割です。

    ≫ 次のページへ