• 合弁契約における注意点その4 中国における合弁契約


    今回は、日本企業が中国で合弁企業を立ち上げるケースを例にして、合弁契約の注意点を整理したいと思います。中国における外国資本産業政策の特徴として、以下の二点をあげることができます。

    ・ 関係法令が入り組んでおり、運用実態も短期間のうちに大きく変動することがある。
    ・ 会社設立や運営の様々な場面において、複数の関係機関から許認可を取得することが必要である。

    したがって、中国進出を検討するにあたっては、法令の改正状況、運用状況、関係機関の対応状況など、逐一最新の情報を仕入れて臨機応変に対応することが求められます。

    中国の企業関係法上、外国資本による法人の形態には様々なものがあり(※)、それぞれの形態について会社法よりも優先的に適用される特別法が規定されています。合弁企業に対しては、まず中外合弁企業法及び関係規則が優先適用され、それらの規定がない場合に会社法が適用されることになります。

    ※1 合弁企業、合作企業、独資企業があり、これらを総称して「外商投資企業」と言います。
    ※2 現在、中国政府は、従来の「外商投資企業」に変えて「外国投資企業」という概念を導入し、これらを総合的に規律する外国投資法の制定を予定しており、今後、合弁企業に関する運用実態が大きく変わる可能性があります。しかし、本稿執筆の2016年5月時点では外国投資法は発効されていませんので、従前の中外合弁企業法に基づいて記述しています。

    1 合弁会社の位置づけ

    中外合弁企業法によれば、合弁企業は有限会社であり、出資者は株式ではなく出資持分を通じて会社をコントロールします。株式がありませんので、当然ながら株券も発行されません。

    2 対象業種と出資比率

    外国資本に対しては、中国政府が外商投資産業指導目録で定めている認可の要件のほか、業種ごとの特別法により個別の制限が課されています(サービス業、製造業、不動産業など様々な分野について特別法の制限があります)。ジェトロのウェブサイトで最新情報が公開されているので、必ず確認するようにしてください。

    中外合弁企業法は、合弁企業にける外国当事者の出資比率は25%以上の必要がある(登録資本の25%以上を引受ける必要がある)と規定しています。この割合を満たさない場合でも合弁企業の設立自体は可能ですが(実際、外国資本の割合が25%を下回る合弁企業も少なくないようです)、課税面での優先待遇等を享受できない不利益を受けます。

    3 合弁契約書及び定款の位置づけ

    中国における合弁企業設立の手順として、事前に関係機関(所轄官庁)から予備的な許可を得た上で、合弁当事者間で合弁契約書と合弁企業の定款を作成し、これらを関係機関に提出して合弁事業の許可を得なければなりません。すなわち、合弁契約書や定款は、単に法人設立の手続書類として形式的に提出するのではなく、合弁事業の許可に際してその内容について実質審査が行われることが前提となっています。

    中外合弁企業法実施条例は合弁契約書及び定款において記載しなければならない事項を規定(必要的記載事項)しており、さらに中国政府は合弁契約書面と定款の雛形を公開していまので、合弁契約の交渉や定款の作成にあたっては、法令の規定と雛形を参照して必要的記載事項に漏れがないようにしなければなりません。

    もっとも、必要的記載事項について具体的にどのような内容を定めるかは合弁当事者の協議に委ねられており、また、必要的記載事項以外の事項を記載することも禁止されていません。したがって、日本国内における合弁契約交渉と同様、各合弁当事者において相互の利害調整のために協議を尽くし、それを各合弁当事者が納得できる形で書面にする努力をすべきことは言うまでもありません。

    4 投資総額と登録資本

    合弁企業に対する出資においては、中国における企業関係法特有の「登録資本」と「投資総額」という概念を理解しておく必要があります。概要、以下のような意味です。

    ・登録資本:株主が合弁企業に出資した総額
    ・投資総額:登録資本に借入金(外国銀行からの借入金と外国企業からの借入金に限られる)を加えたもの

    中国政府は「合弁企業の登録資本と投資総額の比率に関する暫定協定」により、投資総額と登録資本の関係を次のように定めています。すなわち、経営の健全化を図るために借入金の割合を一定限度以下にする必要があるということです。合弁企業もこの規律に従う必要があります。

    資本要件02

    なお、合弁企業は、管轄の審査・許可庁から許可を得なければ、登録資本の増減を行うことはできません。

    5 出資時期

    登録資本の出資については、出資時期が会社設立後であっても良く、かつ、一括出資のみならず分割出資も認められています。一括出資の場合は、会社設立の日(事業許可証の発行日)から6ヶ月以内に全額払込み、分割出資の場合は、会社設立の日から3ヶ月以内に出資額の15%以上を払い込む必要があります。

    上記のとおりですので、一部の合弁当事者が登録資本を払込んだにもかかわらず、他の合弁当事者が出資義務を履行しないという事態が発生する危険があります。そこで、通常、合弁契約および定款においては、合弁当事者の出資金の払込時期や払込方法に加えて、出資義務違反があった場合の対処方法(例えば遅延損害金や違約罰を定めるなど)についても定めておきます。

    6 機関設計、役員構成

    中外合弁企業の内部組織としては、最高意思決定機関としての董事会、監査機関としての監事または監事会、日常経営管理機関として総経理等を置く必要があります。要点を整理しておきます。

    ・出資者全員で構成する機関(株主総会や社員総会に相当するもの)は無く、董事会が最高決定機関である。
    ・董事、監事、総経理とも外国人(日本人)でもOK。
    ・董事の人数は3名以上13名以下(具体的な人数及び配分については合弁契約および合弁企業の定款を通じて決定する)、任期は4年(※)。
    ・監事会を設置する場合、監事会の構成員の3分の1以上は従業員代表であることが必要。

    ※ 中外合弁企業法実施条例の規定によると董事の任期は4年ですが、一般には最長期間を定めたものと理解されています。

    7 意思決定方法

    董事会のメンバーである董事は 一人一票の議決権を持ち、董事会の決議開催のためには3分の2以上の董事の出席が必要です。

    定款変更、解散、登録資本の増減、合併及び分割については、董事会に出席した董事の全員一致でなければ決議できず、定款によっても変更することはできません。上記以外の事項については、定款で自由に決議要件を定めることができます。

    8 持分譲渡制限

    中外合弁企業法実施条例は、合弁会社の持分譲渡について次のような制限を規定しています。

    ・出資持分を譲渡するには、他の合弁当事者全員の同意を得て、主務官庁の許可を得ることが必要。
    ・他の合弁当事者は、第三者に持分を譲渡する条件よりも有利な条件で出資持分を買受けることについて優先交渉権を有する。

    これらの規定からすると、持分譲渡は法律上当然に禁止されていると言えます。

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