• 合弁契約における注意点その3 台湾における合弁契約

    日本企業が台湾で合弁企業を立ち上げるケースを例にして、台湾における合弁契約の注意点を見てみましょう。まず、合弁契約の一般的注意点国際合弁契約における注意点は、台湾における合弁契約にもそのまま当てはまります。重要な点について、もう一度おさらいをしておきます。

    ・ 少数出資者(合弁当事者)であっても、その者が提供する経営資源が重要であることから、合弁契約において企業統治に関して法令の規定以上の権利を与えることが多い。
    ・ 国際合弁契約の場合、合弁会社に対する規律は当該国の法律に従う必要があるので、その国の企業関連法をリサーチする必要がある。
    ・ 各当事者が合弁会社に対して技術、人材、資本、営業ノウハウなどの経営資源を提供するため、それぞれについて個別の契約(例:ライセンス契約、出向契約、物品販売)が結ばれることが多い。

    これらを前提にして、台湾における合弁契約についての個別の注意点を見てみます。

    1 出資比率

    台湾では、外国人ないし外国企業が台湾に現地法人を新設し、または既存企業に出資する場合、原則として「外國人投資條例」の規定に従い、事前に経済部投資審議会の外国人投資許可(FIA; Foreign Investment Approval)を得なければなりません(経済特区での投資については例外が設けられています)。

    投資審議会が公表しているネガティブリスト上の禁止事業及び制限事業(ジェトロのウェブサイトでは日本語で公開されています)に当たらなければ許可を得ることができます。

    もっとも、中国大陸資本の直接または間接の出資比率が30%を超える場合、「外國人投資條例」は適用されず、「大陸地區人民來臺投資許可辦法」の規定に従い、投資審議会の投資許可を得なければなりません。

    上記の他に、安全や健康などの公益目的から業種によっては個別法により外国資本の出資比率に制限が設けられているものがありますが(ラジオ・テレビ経営業、航空業、配電業など)、営利事業の大部分は制限の対象外ですので、一般的には制限対象になる可能性は低いでしょう。

    2 機関設計、役員構成

    台湾会社法上、株式会社(股份有限公司)の機関としては、経理人、株主総会(股東會)、董事会、監察人があります。以下の点に気をつけてください。

    ・ 董事は外国人でもOKだが、経理人は原則として台湾国内に住所または居所を有している必要がある(そのため、台湾人が就任することが多い)。

    ・ 日本の会社法では株式会社の取締役は1名でも良く、任期2年(非公開会社では10年まで延長可)とされているのと異なり、台湾の会社法では董事の人数は3人以上で、任期は3年以内とされている。

    3 意思決定方法

    取締役会と株主総会における意思決定の方法は似ていますが、開催用件と決議用件の定め方が微妙に異なります。株主総会の特別決議は、日本、台湾いずれも3分の2の特別多数を要する点では変わりませんが、それを開催要件として求める(台湾)のか、決議要件として求める(日本)のかの規律が異なります。

    例えば、台湾企業51%、日本企業49%の出資比率で台湾で合弁企業を設立するケースにおいて、少数派の日本企業が株主総会の特別決議事項に反対したい場合、台湾の会社法のもとでは「発行済株式総数の3分の2」という株主総会特別決議の開催要件を崩す必要があるので、特別決議を議決する株主総会に出席しないことが必要になります。日本の会社法のもとでは、株主総会に出席した上で議案に反対する必要があるのと異なり、うっかり出席してしまうと「出席株主の議決権の過半数」という決議要件により可決されてしまうことになります。

    表001
    ※ 日本では取締役会の決議要件は議題によらず同じですが、台湾では一定事項については特別決議が要求されます。具体的には、董事長の選任、社債発行、新株発行などです。

    4 台湾の独禁法:合弁会社と合弁当事者との契約

    合弁当事者が自社の利益を優先するあまり合弁企業との間で不公平な内容の契約を締結すると、公平交易法(日本の独占禁止法に相当する法律)違反となる可能性があります。

    合弁企業との取引事例ではありませんが、2015年12月には、台湾の公平交易委員会(日本の公正取引委員会に相当する組織)が、日本企業を含む10社がコンデンサの取引に関して価格調整を行っていたことが公平交易法に違反するとして、日本円で合計200億円以上の課徴金を科す決定をしています。合弁企業と合弁当事者との契約においても、注意が必要です。

    5 競業避止義務

    合弁契約において競業避止義務の規程を設ける重要性は、合弁契約の一般的注意点国際合弁契約における注意点のところで述べたとおりです。アジア企業との合弁事業においては合弁相手による競業避止義務違反が生じるケースは少なくなくありません。残念ながら、合弁相手の台湾企業の競業避止義務違反により日本企業が合弁契約を解除したという最近の事例もあります。このような実情を踏まえて、合弁契約書には競業避止義務の範囲・内容をしっかりと明記しましょう。

    6 譲渡制限条項

    従来、台湾の会社法のもとでは、定款によっても株式譲渡を禁止することができないと規定されていました(台湾会社法163条1項)。もっとも、株主間の合意によって株式譲渡を禁止することは有効であると解釈されており(台湾高等裁判所民国97年11月18日判決等)、実際にもそのような解釈を前提として合弁契約において株式譲渡制限を行うというのが実情でした。

    この場合、譲渡制限に反して合弁当事者の一方が第三者に株式を譲渡すると、合弁の相手方当事者の立場としては、株式を譲り受けた第三者に対して株式譲渡制限を対抗することはできず(株式譲渡が無効であると主張することはできず)、株式を譲渡した合弁当事者に対して契約違反の損害賠償請求をすることで対応するしかないということになります。しかも、この損害賠償請求における損害の立証は容易ではありませんので、合弁契約書において違約金の定めをしておくなどの対処が必要になります。

    もっとも、2015年の改正で、台湾会社法においても、株主が50人を超えない場合は定款において株式譲渡を制限する定める閉鎖会社とすることできるようになりましたので(台湾会社法第5章「股份有限公司(株式会社)」に「閉鎖性股份有限公司(株式譲渡制限会社)」の節が新設されました)、今後は、この規定を用いて定款における株式譲渡制限の対抗力を主張していくことになると思われます。

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