• 合弁契約における注意点その2 国際合弁一般

    【国際合弁契約とは】

    日本企業が海外進出する方法としては、駐在事務所の設置、支店の設置、現地法人の設立など様々な形態があります。他の企業と協同して現地法人(合弁企業、ジョイントベンチャー)を立ち上げる場合は、合弁企業に参加する合弁当事者間で合弁契約(Joint Venture Agreement)を締結する必要があります。

    合弁企業を立ち上げる対象国の企業と合弁契約を結ぶケースが多いですが、それ以外にも、第三国の企業と合弁契約を結ぶ(例:日本企業が香港企業と合弁契約を締結して台湾に法人を設立)場合や、外国での合弁企業設立について日本企業同士が合弁契約を結ぶ場合もあります。

    【国際合弁契約の特徴】

    合弁契約の一般的な特徴に加えて、国際合弁契約の場合、少なくとも合弁会社の設立に関しては当該国の企業関係法制に従う必要があるという点が特徴的です。したがって、合弁契約の締結の前に、その国の企業関連法をリサーチして内容をよく把握しておく必要があります。

    筆者が相談を受けた中には、「A国の法律ではこのような決まりになっていると説明を受けてそのとおり合弁契約を交わしたのだが、実際にはそのような法律の規定はなく、単に相手方が自分の有利な条件で契約するための便法だった」という事例がありました。このような場合、合弁契約締結後にその修正や変更を求めても応じてもらえるとは限りませんので、契約書の作成を合弁の相手方任せにすることは絶対に禁物です。

    【国際合弁契約の記載事項に関する具体的な注意点】

    国際合弁契約においても、合弁契約の一般的な注意点は全て当てはまります。さらに、以下のような点に注意する必要があります。

    1 合弁の目的

    国際合弁契約においては、習俗や慣習、考え方の違いから、合弁の相手方当事者や合弁企業の設置国との間で契約書の個別条項の規定の仕方や解釈が問題になる可能性が一層高くなります。したがって、日本国内での合弁契約にも増して、合弁契約書において合弁の目的や趣旨を明確に記載してくことをおすすめします。

    2 出資比率

    一般に、どこの国でも、国家の主権維持や安全に関わる産業分野については出資規制を設けています(日本にもそのような規制があります)。さらに、アジアの新興国では、国内産業の育成のために広範な出資規制をしていることがあります。出資の対象分野(合弁企業の目的)と出資比率の双方から制限をかけていることが多いです。

    出資のための手続きに時間を要し、合弁企業の立ち上げを後ろ倒しにせざるを得なくなるケースも多くありますので、規制の内容と必要な手続きについてよく確認するようにしてください。

    3 機関設計、役員構成

    合弁企業の機関設計は基本的に対象国の法律に従うことになります。国によっては、当該国に本拠がある者でなければ役員になることができないと決まっていることもあります。

    4 意思決定方法

    どの国でも企業の意思決定は多数決で行うことが通常ですが、具体的な多数決の方法は国、決議機関、議題等によって異なります。意思決定方法に関する定めは、会社の支配権に直結する問題として、合弁契約における最も重要なポイントの一つですので、交渉のテーブルにつく前に、当該国における企業内での意思決定方法について必ず確認してください。

    5 合弁会社と合弁当事者との契約

    合弁企業と合弁当事者との間の取引(原材料供給、製品販売、出向、ライセンス、工場建設など)について、合弁当事者が優先的契約権や独占権を持つという形で規定する場合、内容によっては各国の競争法(市場における公正で自由な競争の実現を目指す法律、日本では独占禁止法や不正競争防止法が相当します)に違反する可能性があります。

    6 競業避止義務

    国際合弁契約の場合、合弁企業設立国内での競合禁止はもちろんのこと、合弁の目的や趣旨に応じて、第三国での競業禁止についても明確にしておくことが望ましいです。

    例えば、A国に進出する日本企業の立場からすると、合弁事業をA国以外の地域に拡大する余地があるならば、競業避止義務の地域的範囲をA国に限定するだけでは足りないということになります。

    7 合弁解消条項

    合弁当事者が合弁事業から撤退する場合、出資比率に変動が生じ、外国人または外国法人による出資比率の規制が問題になる可能性がありますので、この点についても解決策を決めておく必要があります。

    8 準拠法

    合弁会社の設立及び運営に関しては少なくとも設立地の法律に従う必要があるため、それ以外の事項についても当該国の法律を準拠法とすることが一般的です。

    合弁当事者間で争いになった場合に日本で訴訟をすることを見据えて、日本法を準拠法とする方が有利とする意見を聞くことがあります。しかし、最終的に現地(合弁企業設立国)で強制執行などにより債権回収しなければならない可能性を想定すると、当該国の法律を準拠法として当該国で法的手続を実施する方が便宜であることが多いというのが実情です。

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